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「トレース水彩画秘伝その12  遠近感は少しオーバーなくらいに描く

風景画は見えない空気を描く絵ともいわれるように、遠近感を表現することは風景画の基本ともいえます。
そのため遠近感を効果的に描くには、ちょっとオーバーなくらいの距離感の演出が必要です。

3つの距離感

それには、「近景」「中景」「遠景」という3つの距離感をしっかり表現にすることにより、絵に情感が生まれ、ドラマが生まれ、魅力が生まれるのです。

風景画で実践!

この写真は鶴岡八幡宮の本殿から見下ろした風景ですが、
「近景」「中景」「遠景」は以下のようになります。

近景 手前の朱色の建物
中景 後の鳥居 
遠景 さらにその後ろにある鳥居と街並
       (写真ではかなりぼやけて見えます)
       
今回はの3点の遠近感を表現します。
距離感の基準となるものを決める


中景の鳥居を基準にして描きます。
その視点から見ると、手前の建物との距離感を強調すべきです。

そのように基準となるものを設けて、前後を調整していくのが遠近感を表現する最も簡単な方法です。

近景を強調することで遠近感を表現する

手前の建物を強く、極力コントラストを強くしました。
それにより、その対比として中景・遠景と離れていくほど明るく・弱くなり、遠景は最低限の淡い色になりました。
絵に広がりとスケール感が生まれ、遥か古都
(ルビ・いにしえ)の雰囲気が出てきました。



別の事例として
この棚田の絵は5月の風景です。そのため実際の山も里も緑一色ですが、「近景」「中景」「遠景」距離にあるそれぞれの緑は、色相、明度、彩度が変っていきます。
遠近感を微妙な色彩の変化、濃淡の変化で表現するからこそ、この絵に情感と広がりが生まれるのです。


    

ポイント


遠近感を強調するには、近距離ほど原色に近い鮮やかな色とし、遠くなるにしたがって色が濁らせたり、うすくします。
また、遠距離になれば青系統の色を強くし、もっと遠くなれば濁色や素地の色を弱め、鮮やかな青としていきます。
また近距離ほどコントラストを強く、遠くなるに従ってフラットに描いていきます。