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「トレース水彩画」秘伝その6  いろいろな線を描き分ける

秘伝1(P12参照)では強い線の描き方を学習しましたが、このページでは、実際にゆりの絵を描くことで、4つの線の描き方とその使い方をご紹介します。
トレース水彩画は「彩色」よりも「線画」が絵をリードする描き方。多様な線を描き分けられれば、線だけでさまざまな表現が可能で、絵の完成度が格段に向上します。


4つの線をマスターしよう

ボールペンの紙への圧力の強弱、いわゆる筆圧の差で、いろいろな線を描き分けることができます。
   
     @      A      B       C

   @秘伝1で学習したような強い筆圧。指先が白くなるほどの強さです。
   A3枚重ねの伝票に文字を書く筆圧です。
   Bさらさらと普通に文字を書く強さです。
   Cほとんど紙に触れる程度のフェザータッチです。


ゆりの花で実践!

家の近くのバス通りに咲いたユリの花です。
4つの線でトレースすることにより、この花からかもし出す気品のようなものを表現しようと思います。
 
 強い筆圧で描く


 ゆりの基本部分まで強い筆圧で描く方法もありますが、ゆりの持つやさしさを表現し たいため、この絵では強い線の描くところは輪郭だけにしました。 
 2.3の筆圧で描く


 次は中ぐらいの強さの線で、対象物の基本部分を描きます。
 この場合でもトレースの素となる写真の明るい部分や薄い部分は
 臨機応変に弱い線とします。
 
 フェザータッチの線で描く


 日のあたる部分と影の部分の境界線や、花びらの中のデリケートな線などは、
 極力弱い線で描きます。
 私はボールペンの重さだけで描く気持ちで描いています。
 

トレースの完成

4種類の強弱の線を描き分けることで、立体感だけでなく、ディテールまで表現できるようになります。


彩色する

サッと彩色して絵が完成しました。
しっかり彩色したように見えますが、線をしっかり描きこんでいるためそのように見えるのです。


ポイント

おさらいすると、「強い線」は輪郭や写真での明暗のはっきりしているところ。「弱い線」は明暗が弱いところ。これはあくまでも迷ったときの指針です。描きなれてくる中級者になると、トレースの行程は写真を「機械的になぞる意識」から、「絵を描く意識」で描くようになります。描く人の感性や美意識で線の強弱を描くことができ、個性的で生き生きした絵を描くことができるのです。