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上級者しか登れない険しい山に、ケーブルカーが開設した、
それがトレース水彩画です。



絵を趣味にしているアマチュアの方と、ブロの画家との大きな違いは、デツサン力にあるといわれています。
確かなデッサン力を身に着けるには、長い期間の訓練と厳しい忍耐力が必要で、プロの画家たちは大変な努力をしてデッサン力を身につけてきたのです。
私は美術学校を卒業したのですが、そのデッサンの授業がつまらなく、「オレの性分に合わない!」と投げ出してしまったのですから、そのことは身を持って知っています。
  
その当時から表現手段の代表格として絵と写真がありましたが、その当時の写真はモノクロしかなく、絞りやシャッタースピードなど操作が難しく、そんな写真より絵の方が明らかに社会的優位を保っていました。
あれから半世紀が経ち、ふたたび絵を描くことになったのですが、その間のカメラの性能は飛躍的に向上し、デジカメやスマホに代表されるように、圧倒的な普及が図られ、社会現象にまでなりました。
それに比較し、絵の世界は進歩も発展もなく、化石のように眠っていました。
伝統を重んじることも大切ですが、改革と革新がなければ、世間から忘れ去られていくのです。

しかし私はそんな絵の現状を「なんて面白いところに来たのだ!」と、ダメな世界だからこそチャンスがあると思ったのです。
町の発明家を自称する私は、誰もがカンタンに上手な絵が描ける方法を開発することに没頭し、そして出来たのがトレース水彩画でした。

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トレース水彩画の最大の特徴は、デッサンの壁を越えた画法にあります。
写真は正確に情景を写す機械とするならば、その写真をなぞるわけですから、初心者の方も正確なデッサンを描くことが出来るのです。
これまでの絵と、トレース水彩画との行程(プロセス)に大きな違いがあります。

     

トレース水彩画は ①写真を撮る ②トレースする、という部分は、従来のプロセスと大きく違っています。
しかしそれは上級者しか登れない険しい山に、ケーブルカーが開通したようなもので、初心者も含めより多くの人が山の魅力を堪能できることになったのです。

絵を描くことで最も大切なことは、描くことを楽しむことだと思っています。
それではどうしたら楽しく描けるか、それは「初心者でも上手に描け、描けば描くほど上達する」ことだと思っています。
そこに焦点をあてて改革を続ければ、トレース水彩画はこれからも進化し続けていくでしょう。


   

空だけでなく、絵の上で大きな面積を占める地面を彩色しませんでした。
この絵のコンセプトは、のんびりと堤防の上で昼寝している、ノー天気な解放感を表現することにあります。
そのためにできるだけ絵を軽くし、彩色分部を絞り込みたかったからです。