古都と言われる街、たとえば京都や金沢、
そして鎌倉もその中に入るのですが、古都には共通の特色があるようです。
それは、そこに暮らす人々が、自分の街や地域に対し、強い誇りと愛情を持っていることです。
環境美化への意識の高さであったり、
高い倫理観であったり、古き良さや伝統を大切に思う気持だったりなど、
根底にあるのは「やさいし心」にあると思いました。
私は鎌倉人の「やさいし心」を、どうしても一枚の絵として表現したいと感じました。
しかし、茫漠とした概念だけでは、たとえアトリエにこもってあれこれ考えたとしても、
いい知恵など浮かぶはずもありません。
こういうときは、カメラをポケットに入れ、ひたすら街を歩くことにしています。
毎日飽きもせず路地から路地へと歩きまわり、たくさんの写真を撮りました。
しばらくしてからその中の一枚の写真が目に留まり、
それを素に描いたのがこの「やさしい心」という絵です。
この絵は女性が路地を掃除している
ごく当たり前の風景に過ぎないのですが、
たとえばヨーロッパでは、街に暮らす人々が家々の窓に花を飾り、
道行く人の目を楽しませるように、
鎌倉人は訪れる人を気持ちよく迎えるために、
ゴミひとつない街にする・・・。
そんな「やさしい心」をこの絵で伝えたかったのです。
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